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遺留分とは?~最低限の取り分を守る制度~
遺言や生前贈与によって、財産の分け方が自由に決められるようになっても、すべてを自由に分けられるわけではありません。
法律は、特定の相続人に対して「最低限の取り分=遺留分(いりゅうぶん)」を保障しています。
■ 遺留分とは
遺留分とは、相続人のうち配偶者、子、直系尊属(父母など)に認められる、法律で保障された最低限の相続分のことです。
たとえば、「全財産を長男に相続させる」という遺言があっても、他の相続人(次男など)は遺留分を請求する権利があります。
■ 遺留分がある人・ない人
相続人 | 遺留分あり? |
配偶者 | 〇 |
子 | 〇 |
父母 | 〇(子がいない場合) |
兄弟姉妹 | ✖ |
■ 遺留分の割合
遺留分の割合は、法定相続分に一定の割合をかけて計算されます。
- 直系尊属だけが相続人の場合:法定相続分の1/3
- それ以外の場合(子や配偶者がいる):法定相続分の1/2
たとえば、相続人が配偶者と子1人の場合、法定相続分は各1/2なので、遺留分は以下の通りです。
- 配偶者の遺留分:1/2 × 1/2 = 1/4
- 子の遺留分:1/2 × 1/2 = 1/4
■ 遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)
もし遺言や贈与によって遺留分が侵害されていた場合、遺留分侵害額請求(いりゅうぶんしんがいがくせいきゅう)を行うことで、金銭での支払いを求めることができます。
この請求は、相続開始と侵害を知ってから1年以内に行う必要があるので、早めの対応が大切です。
2020年の法改正で変わった点
以前は、遺留分を取り戻すために「物そのものの返還」を求めることができましたが、
2020年(令和2年)の法改正により、現在は金銭による請求が原則となりました。
これにより、不動産を共有名義にして争いが長期化するケースが減るなど、実務的な整理が進みました。
遺言を書く方・相続人どちらにも重要な制度
- 遺言を書く際は、「遺留分を侵害していないか」に注意が必要です。
相続トラブルを防ぐためにも、遺留分に配慮した内容にするか、事前に説明・対策を講じておくことが望ましいでしょう。 - 相続人の立場では、「もらえないと思っていたけれど、実は遺留分の請求ができた」というケースもあります。